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「――何だその顏。デメキンかよ」
「うっさいっ! ダージリンのミルク!」
はいはい、とカフェ店員の桐谷元春(キリタニモトハル)はカウンター席に座った私を見下ろしながら水が入ったグラスを出してきた。
「梅(ウメ)は男運ねーからなぁ」
にはには、と笑ってもいる。
もうっ! その顏むかつく!
ここは街外れのカフェ『dernier』(デルニエ)。
大学の友達、瑠美(ルミ)に連れてきてもらったのが始まりだったのだけれど、まさかこいつ――ニモがいるなんて。
苗字の最後と名前の最初を取って、ニモ。
高校時代から私が呼んでいるあだ名である。
つまり、昔馴染み? な奴だったりしてここで働いている。
一昨日、私は振られた。
彼氏――もう、元彼に。
一昨日家に帰ってから呆然として、昨日は一日中泣いていた。
言われた通り、目はデメキンみたいに腫れている。
大きめフレームの赤縁眼鏡をかけてきたから気づかれないと思ったのに、なーんですぐに気づくんだか。
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