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「いや、えー……」
肩より長い髪、アンダーリムの眼鏡。
「一応許可取って相席させていただいたんですけれど……もしかして覚えてません?」
それは約十五分前だと言う。
満席になる前、彼女はカウンターに座っていたらしい。
けれど二人組の客が来たので席を譲ったのだとか。
それで唯一空いていたのが僕が座るテーブル席だった、というわけなのだが、全く覚えていない。
「申し訳ありません。仕事中だと周りが見えないもので」
僕はノートパソコンを閉じてコーラを飲んだ。
「――じゃあ、ここからスタートで」
ここから?
と、彼女は横向きに座っていた尻を滑らせ前を――僕の正面に向いた。
足の爪先が、こつん、と当たったので思わずひっこめる。
「相席失礼します。コーラの人さん」
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