赤い雨

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フィーとの会話に区切りをつけて、私は二人と一緒に部屋を出て、階段を下りる。 本当は、窓から飛んでもよかったのだけれど、そうしてしまうと、部屋にある書類が風に煽られて悲惨なことになってしまう。 だから、私は、書類があるときは窓から飛ばないようにしていた。 「それじゃあ、行ってくるの!」 「竜達によろしくね」 「気をつけて行くのですよ?」 「ふゆっ、分かったのっ、行ってくるの~」 そうゆって、私は二人に背を向けると、背中の大きな翼を広げ前に倒れ込む。 そして、完全に倒れてしまう前に、私は大きく羽ばたく。 空へ! その思いとともに、私の体は空中を切り裂く。 私が大好きな、空の旅だ。 ある程度の高さまで上がった私は、クルリと振り向き、手を振るお姉ちゃんとフィーにブンブンと手を振り返す。 そして、右手につけている指輪に魔力を注ぐと、風で私の周囲に結界を張る。 これで、準備万端なの! この風の結界さえあれば、私はどこまでも飛べる。 どんなスピードでも傷つかないですむ。 結界を張ってからの私は、速かった。 どんどん過ぎ去る景色を眺めながら、私は淡い緑に発光している森を目指す。 『鎮めの森』 そこは、特殊な発光植物が群生しており、魔物もほとんどいないとされている場所だ。 そして、その中心部に、人間達が『禁域』と呼ぶ場所が存在する。 遥か昔、私の先代に当たる竜王が、生物の侵入を探知する結界を張って囲った場所。 『竜の谷』がそこにある。 王都から数分でその結界の前までたどり着いた私は、最近になって名前をつけた魔法を使う。 「開け、『引き出し』なの!」 そうゆうと、私が見ていた何もない空間が、パックリと黒い口を開いた。 「物体指定、玉(ぎょく)!」 そして、その開いた口から、黄色い人拳程の球体が飛び出したのだった。
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