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この術は、私が『引き出し』と名づけた空間魔法だ。
『引き出し』の中には物を入れられるし、取り出すこともできる。
以前、武器を収めるためにこの術を使っていたけれど、名前をつけていた方が扱いやすいと知ったのはつい最近だ。
そして、それを教えてくれたフィーは、『そもそも名前のない術の使用なんて、できる人の方が少ないのですが……』ってゆってた。
どうやら、私はあまり一般的ではないことを行っていたらしい。
「ガルドー、今からそっちに入るのー」
術の名前については、とりあえず置いておくとして、私は黄色い球体に魔力を流しながら話す。
この黄色い球体の正体は、竜族との通信ができる媒体だった。
「承知した。子らも待ちかねているぞ」
「ふゆっ、すぐ行くのっ!」
玉と名づけたその黄色い球体からの言葉に、私はピンっと耳を立てて応じる。
そして、私は禁域へと飛び込んだ。
「ふゆっ、待てーなのー」
「ピュー」
「ピュピュー」
翠の瞳を持つ竜達に歓迎を受けた私は、ガルドから細々とした報告を受けた後、子供達と遊んでいた。
「ふゆっ、捕まえたの!」
「ピュユッ!?」
子供達との遊びは、大抵、追いかけっこか、かくれんぼか、鬼ごっこ、水遊びだ。
とはいえ、魔法もありだから、少し成長していて魔法を使える子達は、飛んでる最中、風で妨害してくることもあるし、かくれんぼでは皆が隠蔽術を使って隠れてしまうから、見つけるのは至難の技だ。
「ピュー」
「ピュッピュー」
「ふゆ? 次は水遊びなの?」
服に噛みついて引っ張る二人の子供が誘う方向は、この空間で最も存在感を放つ泉だ。
たしかに、少し暑くなってきたから、今から水遊びをすれば涼しくなれそうだ。
「水遊び、するのー」
子供達の誘いに喜んでのった私は、中央にある泉へと飛んでいく。
しかし、その途中で、視界が赤く染まる。
「っ!?」
泉が、草花が、子供達が、一瞬、赤くなったように見えて、私は思わず翼を止める。
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