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「あら、もしかして一球くんは彼女の事を知らないのかしら?」
「一風神先輩・・・もしかすると瀬菜の事を知ってるんですか?」
ピタッと頬に冷たく冷えたペットボトルが当てられ、頭の上には一枚のタオルを乗せると萃香は一球の隣に立ってグラウンドを眺める。
「そうね・・・。去年始めてあった日から私なりにいとこの那由多や聖ジャスミン高校の八宝乙女含めて調べてみたんだけど・・・三ツ星瀬菜も二年前の全中世界大会のメンバーに選ばれていて、おまけに彼女一人、当時中学二年でレギュラーに選ばれていたそうよ?」
「えっ? 瀬菜が!?」
「どうやら各強豪のスカウトを蹴って、此処に来たみたいね。大凡、予想は付いてるけど」
青と赤のオッドアイで一球を見る。
「・・・って、何でボクを見てるんです?」
「ホント、一球くんって・・・お父さんの小波球太と違って鈍感なのね・・・。それじゃ、いつまで経ってもそのペットボトルを用意したあの子の気持ちは通じる事が無さそうね」
「・・・はい?」
「いいえ、気にしないで。それより一球くん。アナタは・・・確か朝倉実くんだったかしら? 野球を再びさせてあげたいらしいけど算段は付いてるのかしら?」
「いいえ・・・まだです」
「私に出来ることがあったら言ってね? 微力ながらも手伝える事があるかもしれないから」
一球は、萃香に礼を言うと、何かを考えるように黙ってしまった。
―ボクに出来る最善の策で、朝倉を救い出して見せるんだ。
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