第一章 魔女と僕

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殺意を圧し殺し、僕は清流に沿って南下していく。 西へ進むと崖があり、崖の下には深い茂みと熊の縄張りがある。 さすがに武器もなく熊とは対峙できないので、住みかを追われた小動物や猪の姿を探した。 「……何もいないな」 いきなり大人数が押し掛けてきたから、動物も警戒して身を潜めているのだろう。 猟犬ならば臭いで探せるだろうが、犬扱いされても僕は人間だ。 主に眼で見つけるしかない。 足下に注意しながら散策を続けると、若草を押し潰し、何かが這って進んだような痕跡を見つけた。 横幅から子熊くらいの大きさではないかと予想する。 子熊なら、なんとかバリラの許まで逃げられるだろう。 慎重に痕を追うと、僕の自宅方向へ向かっていることに気がついた。 人里へ降りてきたのだろうか?
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