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警戒しながら歩を進めていくと、草藪の辺りにうっすらと血痕が残されていた。
まずい。傷を負った獣は危険だ。
一度戻り、誰かを連れてくるべきだろうか?
しかし、もし子熊が息絶えていたら、自宅はすぐそばだし、食糧として運べるかもしれない。
……よし、行こう。
むざむざくれてやる理由もないし。
冷や汗が頬を伝い、呼吸が荒く短くなる。
草藪へ恐る恐る上半身をつっこみ、掻き分けて奥へ進んだ。
「ーーあれ? 人が……」
まるでそこだけが手入れされたかのように、短い芝が生え揃った四メートル四方の空間が広がっていた。
その中央に、傷を負った少女が力なく横たわっている。
髪色は世にも珍しい黒色。
腰まで伸びた鴉の羽根のように艶やかな髪は、まるで伝説の……
……魔女、なのか?
アスタリアの図書館で読んだ、魔女に関するお伽噺に、黒髪を翻し高らかに笑う姿が挿絵としてあった。
曰く、存在悪である、と。
魔女を見つけたら、騎士団への報告が義務づけられている。
勿論、見かけたという事例は聞いたことがない。
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