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だが、確かに目の前には魔女と思わしき少女が傷を負って倒れている。
生涯に一度、あるかないかというほど、人生を逆転させるチャンスが転がっているのだ。
魔女を捕まえたとなれば、いくばかの褒賞金が与えられるだろう。
それを持ってどこかへ逃げれば、もうこんな惨めな暮らしをしないですむ。
「……神様、ありがとう」
僕は震える右腕を伸ばし、少女の左手を掴んだ。
……冷たい。
「まさか……死……」
死んでいれば、価値は間違いなく落ちる。
折角のチャンスをふいにしてなるものかと、僕は慌てて近より脈をとった。
とくん、とくん、と弱々しく脈打っており、辛うじて命を繋いでいるのだと僕へしらせる。
仰向けに体勢を変えると、ギョッとした。
右肩から血が滲み、左足は紫色に腫れ上がっていた。
素人目にみても、明らかな重傷だ。
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