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このまま放置していれば、少女はそう遠くなく死を迎えるだろう。
「家はすぐ側か……」
少女の伸ばした左手の延長線上に、僕の自宅の軒裏があった。
道は下っているし、運ぼうと思えば運べる。
「どうしよう……」
何が一番、僕にとって有益かを考えた。
褒賞金、騎士団への加入、魔女の研究……
「いや、待てよ……」
魔女を利用する。
これが最も僕にとって有益ではなかろうか。
そうだ。魔女を差し出したからといって、褒賞金が貰えるとも限らない。
それどころか、存在を秘匿するために、僕がころされてしまう可能性もある。
むしろ、後者の可能性が高い。
ともあれ、少女が生きていなければ、何も始まらないんだ。
「……たす、け……て」
「ーー!?」
僕が思案していると、少女は微かに目を開き、消え入りそうな声で懇願した。
瞳の端から、一筋の涙を流して。
「……運ぼう」
情に流されたわけではないが、僕は少女を自宅へ運ぶことにした。
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