第一章 魔女と僕

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医方術の本には、傷や病に効能のある薬草が描かれていた。 記憶を掘り起こし、絵と似た草を探し回る。 「これがヨモギ……だったかな?」 数種類の薬草を摘み、ついでに食べられそうな木の実と山菜を採取した。 山へは無許可で立ち入れないので、今を逃せばありつけない。 シャツを脱ぎ、首もとと袖口を結んで、袋の代わりに使う。 両手で抱える量に達し、暗くならないうちに山を降りた。 夕方に入り、早朝から働いていた面々が畑から戻ってきた。 僕は見つからないように軒裏を移動し、自宅へと急ぐ。 「……ただいま」 薄暗い部屋の扉を開け、僕は室内を見渡した。 少女はベッドで健やかな寝息をたてている。 僕は胸を撫で下ろし、薬草をすり鉢で細かくし調合した。 「うわぁ……臭い……」 ツンとした悪臭に眉を中央へ寄せ、両手を目一杯伸ばしてすり鉢を運ぶ。 少女は大量に汗を掻いており、僕はタオルと着替えを用意した。
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