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「いや、何でもないよ。それより、なにか口に入れる? 木の実と山菜のスープならあるけど」
「……いただくわ」
「わかった。少し待っててね」
僕は台所で作り置きしていたスープを温めに、その場を離れた。
すると、サリナは鼻を動かし、体から発せられる臭いに嫌そうな顔をした。
傷口へ調合した薬草を塗り込んだせいで、近づくとツンとした臭いが鼻を衝く。
スープを運び、僕は勝手に着替えさせたことと、臭いの原因について謝罪した。
「いいの。助けてくれたんでしょう?」
「あ……うん」
サリナは初めて微笑み、僕へ礼を言う。
僕は彼女を利用しようとしていた罪悪感に苛まれ、複雑な笑みを浮かべた。
「……苦い」
「ごめん。調味料がろくに無くて……」
「でも、とても温かいわ」
「……そっか。食べたらもう少し眠るといいよ」
「そうする」
スープをたいらげ、サリナは横になり眠った。
食器を片付けながら、僕は今後について頭を悩ませる。
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