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サリナと慎ましく生きる未来、なんてものがあっても、いいのかもしれない。
まるでアリアがいた頃のような、ぬくもりのある生活。
なくしてしまったものが、再び蘇ったかのような錯覚。
それらが僕の心に躊躇いを生む。
「……それは無理、かな」
思わず口を出た言葉。
もし、サリナの存在が知れ渡れば、名士達は彼女を献上品として領主〈ロード〉の許へ連れていくだろう。
それだけの器量がサリナにはある。
アリアのように。
「クソッ……」
皿を握る両手へ、割らんばかりに力がこもる。
アリアは、僕が義務教育へ出向くと同時に、献上品として連れていかれた。
アスタリアの更に北、王都マゼルガへ。
結論からいうと、アリアはそこで息を引き取った。
誰の目も届かない、寂れた倉庫の中で。
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