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復讐の牙をもがれた僕に、いったい何ができるというのだろう。
一日を生き延びるだけで精一杯な僕に、何が。
ピシリ、と握りしめた皿にひびが入る。
まだ僕にこんな力が残されていたなんて、驚きだ。
「……ふう」
息を大きく吐き出し、鬱積した闇を吐き出した僕は、皿を片付けサリナの許へ向かった。
健やかに眠る彼女の傍らで膝をつき、額を覆う黒髪を撫でてみる。
アリアへしていたように、優しく。
擽ったそうに眉を動かし、サリナは寝返りをうった。
そんな様子を見ていた僕は、サリナをどこか遠くへ逃がそうと決意した。
お金もツテも、何もないのだけれど、考えればきっとあるはずだ。
彼女を逃がす手段が。
サリナへかぶせていた毛布をかけなおした僕は、クローゼットの奥に仕舞っていた大陸の地図を取り出し、床へ広げて頭を捻らせた。
東西南北のどこへ向かうにしても、国境を跨ぐ際には通行証が必要だ。
領主、あるいは上級貴族以上に発行してもらう物だが、多額の金を要求される。
もちろん、そんな持ち合わせはないし、かといってコネもない。
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