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想像していた通りの激痛が、まるで稲妻のように全身を奔る。
けれど、想像以上ではない。
落下速度、自重、高さから導き出した答えは、いつものように正しかった。
だから、私はまだ動ける。
少女の目は弱々しいながら、強い希望の光を宿したままだ。
這うように、さながら亀のような速度で、確実に進む。
左足が思うように動かない。
右肩が燃えるように熱い。
呼吸すら阻害する、肋骨の軋み。
だが、進む。
陽が落ちてあたりが見通せなくなった頃、少女の体に異変が起きた。
「あ……れ……?」
糸の切れた操り人形のごとく、突如体の力がガクリと抜ける。
崩れ落ちた視線の先に、木々の隙間から民家の軒裏が見えた。
もしあそこの住人に見つかれば、今の状態では逃げ延びる術がない。
動かなければ。逃げなければ。
しかし、少女の意思とは無関係に、意識はだんだんと遠のいていく。
「こ……んな……」
すがるように伸ばした左手は、何も掴むことなく地に伏した。
「――あれ? 人が……」
次に彼女が目覚めたのは、少年の温かな右腕に触れた時だった。
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