第一章 魔女と僕

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今日も向かう先は同じ。 村の西側に広がる小麦畑。 そこは村長の持つ、村で一番大きな畑だ。 端から端まで歩くのに、およそ三十分はかかる。 それだけ大きな畑だから、害虫や雑草、病気による被害があとをたたない。 僕の仕事はイナゴを見つけ、駆除すること。 捕まえたイナゴは働き手で分け、その日の食卓へあがる。 素敵だよ。最高に素敵だ。 過労と栄養失調は常に傍らで待ち構えている。 まるで死神のように。 遠く、誰も知らない土地へ行けたら、どんなに幸せだろうか。 だが、遠くへ行くだけの体力もお金もない。 このまま座して死を待つだけ。 それが僕の人生だろう。
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