第1章

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 それから1週間ほどたったある日。私がいつものように出勤しようと玄関を出ると、例のお隣さんがごみ袋を片手に部屋から出てきた。  そのゴミの量ときたら、普通なら考えられないほどの大量で、しかも紙ごみがほとんどだった。 「お、おはようございます。ゴミ出しですか?」 「あ……、おはよう、ございます。燃えるゴミ……今日ですよね?」  ボソボソと遠慮がちに話すお隣さんは、私がゴミの日の違いを指摘したと思ったようだ。 「はい。そうですけど……」  私がそう答えると、お隣さんはちょっと照れ臭そうに頭をかいた。 「良かった。ゴミ……溜まっちゃってて、困ってたんです」 「は、はあ……」  私はどう答えていいものか分からなかったが、電車の時間もあるし、そうそうに会話を終わらせた。 「じゃあ、私、仕事なんで」 「ああ……。いってらっしゃい」 「い、いってきます……」  なんだか朝からモヤッとした気分を感じながら、私は駅への道を急いだ。
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