第1章

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 会社に着いた私は、給湯室でコーヒーを飲みながらぼんやりと考えていた。  今日はたまたま朝から見かけたが、これまで1度も会ったことがなかったのだ。  何の仕事をしているのか。いや、そもそも仕事をしているのかも分からない。 「なんか、怪しいんだよね……」 「なにが?」  同僚に話しかけられ、自分が独り言を言っていたことに気付く。 「あ、や……。隣に引っ越して来た人がちょっと変わっててね」 「変わってるって?」 「うーん。人は良さそうなんだけど、なんかオタクっぽいっていうか?」 「えっ? オタク!?」 「うん……。しかも、ずっと部屋にいるみたいで、どうも会社勤めしてる感じじゃないんだよね」 「ええ~、大丈夫? 新手のストーカーとかじゃないの?」 「違うよ。全然知らない人だもん」 「バカね。あんたが知らなくても、向こうは知ってるかもしれないじゃない」 「そうかな?」  あんなに変わってる人、会ってたら覚えてると思うんだけどな……。  始業開始のチャイムがなり、私たちは朝礼をするために給湯室を出た。
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