第1章

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 それからしばらくはまた会わない日が続き、燃えるゴミの日の朝だけ姿を見せた。  結局は何をしている人なのか分からないままだ。  意気投合したからといってお隣に訪ねていくのも違う気がしたし、相変わらず同僚からは「やっぱり怪しいよ」と言われて続けていた。  それから数ヶ月過ぎた休日。見知らぬ男の人が訪ねてきた。  スーツ姿の長身の男性。髪は癖っ毛の短髪で、黒ぶち眼鏡をかけている。 「あの……どちら様ですか?」 「えっ? えと、隣の……」  そう言って指差した先は、例の怪しいお隣さんの部屋。 「えっ!? うそ!? お隣さん!?」 「ああ、こんな格好してるから……。今日は出版社に用があったんですよ」  照れ臭そうに言うその仕種と声は、確かにお隣さんのものだった。 「嘘みたい……」  こざっぱりとした格好のお隣さんは、そこそこのイケメンに変身してしまっていたのだ。 「ううん……。第一印象、悪すぎたかな?」 「えと、それは……」  肯定も否定も出来ず戸惑っていると、スッと目の前に本が差し出された。 「えっ?」 「まだ書店に並ぶ前のものだけど、あなたに読んでほしくて」  受け取って良く見ると、著者名のところに『有沢悠司』とある。 「これ。有沢悠司の最新刊? でもなんで?」 「さっき、出版社に行ってもらってきたんです。本、好きだって言ってたでしょ?」 「言いましたけど……。あの、出版社にお勤めなんですか?」 「いや……。僕の本です」 「はい?」 「僕が書いた本なんです。これ」 「え、ええ~っ!?」  なんと、お隣さんはあの『有沢悠司』その人だったのだ。
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