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「嘘みたい……」
「あ、2回言いましたね」
「だ、だって……。まさかお隣さんが有沢悠司さんだったなんて」
「まあ、自分が何者か言う機会も無かったし。というか、言ってどうってことでも無かったし。でも、こんなに驚かれるとは思わなかったな」
有沢さんは困ったように言った。
「だって、こういう作品書いてるような人には見えなかったし……」
「酷いなあ。僕って、どういう風に見られてたんだろ?」
「怪しい……ストーカー?」
「え……、はあ~」
有沢さんは絶句すると、そのまま項垂れてしまった。
「あ、でも、今は違いますよ! っていうか、あの本の話をした時から、その……、本当は良い人なんじゃないかなとは思ってたんですよ?」
「『本当は』って、僕は元から健全な人間ですよ」
「でも、不健康そうな生活してるように見えましたけど?」
「それはまあ、否定しません……」
バツが悪そうな有沢さんに、おもわず吹き出してしまう。
「ウフフ……!」
「まいったな。ハハッ……」
ひとしきり笑いあった後、有沢さんはまた照れ臭そうな表情で言った。
「それ、読んだら感想聞かせてください」
「えっ? でも……。私なんかの感想で良いんですか?」
「あなたの感想が聞きたいんです」
「えっ……」
「あなたがこの本を読んで、どう感じたのか……。それが知りたい」
私の隣に引っ越してきたのは人気小説家。だったけど……、ちょっと怪しい雰囲気で、とっても照れ屋な良い人みたいです。
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