第1章

8/8

2人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
「嘘みたい……」 「あ、2回言いましたね」 「だ、だって……。まさかお隣さんが有沢悠司さんだったなんて」 「まあ、自分が何者か言う機会も無かったし。というか、言ってどうってことでも無かったし。でも、こんなに驚かれるとは思わなかったな」  有沢さんは困ったように言った。 「だって、こういう作品書いてるような人には見えなかったし……」 「酷いなあ。僕って、どういう風に見られてたんだろ?」 「怪しい……ストーカー?」 「え……、はあ~」  有沢さんは絶句すると、そのまま項垂れてしまった。 「あ、でも、今は違いますよ! っていうか、あの本の話をした時から、その……、本当は良い人なんじゃないかなとは思ってたんですよ?」 「『本当は』って、僕は元から健全な人間ですよ」 「でも、不健康そうな生活してるように見えましたけど?」 「それはまあ、否定しません……」  バツが悪そうな有沢さんに、おもわず吹き出してしまう。 「ウフフ……!」 「まいったな。ハハッ……」  ひとしきり笑いあった後、有沢さんはまた照れ臭そうな表情で言った。 「それ、読んだら感想聞かせてください」 「えっ? でも……。私なんかの感想で良いんですか?」 「あなたの感想が聞きたいんです」 「えっ……」 「あなたがこの本を読んで、どう感じたのか……。それが知りたい」  私の隣に引っ越してきたのは人気小説家。だったけど……、ちょっと怪しい雰囲気で、とっても照れ屋な良い人みたいです。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加