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「この女は悪魔なんだ」 呟くように男が言った。 ( はあっ!?悪魔ぁ!? ) マリは突拍子も無い男の一言に、唖然としながら男を見つめた。 「この女は悪魔だ」 今度はハッキリとした口調で男が言った。 男の瞳には先程の輝きは既に無く、虚ろで焦点の合わない視線をマリに向けていた。 「悪魔?……マリ、怖いなっ!」 マリが男に同調して大袈裟に怖がると、男が目を見開いて嬉しそうな笑みをマリに向けた。 「僕はこの悪魔を、もう十八年間も探し続けているんだ」 「悪魔を探しているなんてオジサマは牧師さんなの?」 十八年前と云えば、まだ自分が産まれる少し前である。つまりレイが産まれる以前から、この男は佐和子さんを探しているという事なのか?そう考えながらマリが男に尋ねた。 「牧師?くだらない!」 男が吐き捨てるように言って、ゲラゲラと笑い出した。 「でもその服装、何だか牧師さんみたい」 「これかい?僕は特別なんだ」 「特別って?」 マリが聞き返すと、男が得意気な笑みを浮かべた。 「僕は、選ばれし人間なんだ。 キミは僕の話しに興味があるようだね?」 マリが微笑みながら大きく頷いた。 「この女の事も聞きたいから、何処かでお茶でもどうだい?」 「マリ、ケーキが食べたぁーい」 マリが喜びながら返事を返した。
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