MARI SIDEⅠ

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二月。 海沿いの街特有の強風が吹き荒れていた。 早い流れの黒雲の中に紅い満月が見え隠れしている。 「……サイコ野郎!!…マジかよ…」 怒りと恐怖が入り混じったような声で、一人言を呟きながら、少女が街灯の無い路地を逃げるように走っていた。 だがそれは、走っているとは言い難く、少女はよろめくように左足を引きずっている。 少女の名前は蓮池麻里。 母親はフィリピン人。ハーフ顔のアイドルフェースな美少女だった。 高校指定の黒いステンカラーのコートが強風にはためいた。 コート丈より遥かに短い制服のスカート。その下の太股が顕になった。 左足の太股からは血が流れ落ち、左足は赤く濡れていた。 路地を抜けた少女は、目の前に広がる倉庫街に侵入すると、辺りを見渡した。 人気(ひとけ)は無い。 自分が走って来た方角から、追っ手が無い事を何度も確認しながら、手当たり次第に鍵の掛かっていない倉庫を探す。 ( あった!) 大きな鉄の扉に、チェーンと南京錠の掛かっていない倉庫を探し当てた少女は、重い扉を押し開けて、身を隠す為に真っ暗な倉庫へと忍び込んだ。
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