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旅立ち①神崎留奈と異端なる者
「………。ユウリが……。
わかった。連れて行きなさい。」
船を引き上げ、戻ってきた春香に、事の顛末を話す留奈。
一度は悲しそうな表情をするものの、一つ返事で了承してくれた。
「Spasibo mame,(お母さん。ありがとう。)」
ユウリは、ロシア語で母に礼を言うと、自室に走っていった。
「はぁ……。
あの子をよろしくね。留奈さん。」
「うん。
優真もいる事だし、大丈夫だ。
安心してください。」
「優真………」
この場に優真がいない事で、全て察した春香は、深くため息をつき項垂れる。
「春香さん。
優真には時間が必要ですから、気長に待ってやって下さい。」
「わかってはいるのだけどね。」
と呟くように言った後、悲しげに笑って見せる。
その姿に、留奈も父が復活した時の事を思い出し、奥歯を噛み締め、拳を握った。
「あぁ…そうだ!
少し待ってて下さい。」
「?」
春香は、何かを思い出したかの様にその場を離れ、戻ってきた時は、手に古びた手帳の様なものを持っていた。
「これを……玲奈さんの墓前に供えて下さい。」
「これは……?」
「日本にいた時に死体が持っていた遺品。
そこには、あなたのお母さんについて書かれているわ。
どうやら、玲奈さんの友達だったみたいね。」
「お母さんの……」
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