旅立ち①神崎留奈と異端なる者

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そこに立つ家は何処と無く、ロシア式の住居には程遠く、どちらかといえば、まだ、日本人が髷を結っていた時代の藁葺きの屋根が特徴の家であった。 「………。 背に腹は変えられないか…」 留奈は、優真を抱き上げると家に向かい走り出す。 家の前までたどり着くと 「すまない! 誰かいるか!!」 と声を掛け、そのままの勢いで扉を蹴り倒した。 「ヒィ!?」 驚き振り返る家の主。 腰まである長い髪を揺らし、ただでさえ白いと思われる肌を真っ青にして、驚いている。 「ん!? 日本人か? 助かった。 すまないが、この子を休ませてくれ!」 「え……えぇ…… 構いませんが………」 家主は、高鳴る鼓動を抑える様な仕草で留奈達を見つめ、死装束の様な白い着物の袖で顔を隠しながら、押入れに向かうと布団を出し引いてくれた。 「すまない。」 「ハァハァハァ……」 「いえ……何もお構い出来ませんが……。」 と、家主は囲炉裏に火を灯す。 その火は、何故か温かみを感じず、留奈は首をかしげた。 「家主さん。 何か冷やすものを…」 「冷やすものですか。 これなんてどうですか?」 家主は、表から雪を持ってくると布にくるみ、留奈に手渡した。 「ありが……。 ん?なんか、普通の人より手が冷たいんですね。」 「冷え性なもので……」
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