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そこに立つ家は何処と無く、ロシア式の住居には程遠く、どちらかといえば、まだ、日本人が髷を結っていた時代の藁葺きの屋根が特徴の家であった。
「………。
背に腹は変えられないか…」
留奈は、優真を抱き上げると家に向かい走り出す。
家の前までたどり着くと
「すまない!
誰かいるか!!」
と声を掛け、そのままの勢いで扉を蹴り倒した。
「ヒィ!?」
驚き振り返る家の主。
腰まである長い髪を揺らし、ただでさえ白いと思われる肌を真っ青にして、驚いている。
「ん!?
日本人か?
助かった。
すまないが、この子を休ませてくれ!」
「え……えぇ……
構いませんが………」
家主は、高鳴る鼓動を抑える様な仕草で留奈達を見つめ、死装束の様な白い着物の袖で顔を隠しながら、押入れに向かうと布団を出し引いてくれた。
「すまない。」
「ハァハァハァ……」
「いえ……何もお構い出来ませんが……。」
と、家主は囲炉裏に火を灯す。
その火は、何故か温かみを感じず、留奈は首をかしげた。
「家主さん。
何か冷やすものを…」
「冷やすものですか。
これなんてどうですか?」
家主は、表から雪を持ってくると布にくるみ、留奈に手渡した。
「ありが……。
ん?なんか、普通の人より手が冷たいんですね。」
「冷え性なもので……」
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