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「赤ん坊の為に、わしらを犠牲にするつもりか?
八重の手の十字のアザは、生贄(いけにえ)の印。
どうせ、5歳までの命なんだから、今殺しても一緒だ。
殺せないなら、さっさと、ここから離れてくれ」
村の役員達も、キツい口調で美知子に言う。
「八重を助けて下さい。お願いします」
泣きながら、美知子が叫んでいる。
美知子の親友、圭子は、防空壕の中で震えていた。
「美知子を防空壕に入れてやって下さい」
村長に声をかけるが、興奮した村長たちにその声は届かなかった。
圭子が美知子の近くに行こうと歩き出した時、圭子の母が必死の形相で圭子の腕をつかんだ。
「行っちゃダメだ。
行けば圭子も殺される。行かないでくれ」
圭子は母の手を振りほどく事が出来ず、涙をポロポロ流していた。
美知子は防空壕の中に入れない事に絶望し、他の場所に移動するため防空壕かから離れようとしていた。
その時、美知子はB29が自分を狙っているのを感じた。
美知子は八重を守る為に全力で走り出した。だが、B29は低空飛行で美知子に狙いを定め、弾を美知子に向かって放った。
そして、そのまま飛び去っていった。
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