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美知子は防空壕を振り返り、自分を見ている村人を睨みつけた。
「あなた達を許さない!
呪ってやる! 未来永劫祟ってやる!」
そう叫ぶと、美和子は八重を抱え山の中へ走って行った。
しばらくして防空壕から出て来た村人達は、美知子が走り去って行った方向を見つめた。
そして、罪悪感を消すために「仕方がなかったんだよ」「八重の運命さ」と口々に言った。
「美知子と八重を救うことが出来なかった。わたしのせい」
圭子は誰にも聞こえないほど小さな声でそう言うと、自分の無力さを後悔し泣き続けた。
「生贄になるはずの八重が死んだからといって、何故おれ達が恨まれないといけないんだ」
「そうだ!そうだ!
村に恐怖をもたらす赤ん坊が死んでくれて、ほっとしたさ」
村人達は、美知子が残した呪いの恐怖を忘れる為に、「これで良かった」と言い続けた。
村長は、この日防空壕で起こった事はここにいる村人だけの秘密にして、決して口外しない事を約束させた。
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