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土曜日のお昼前、コンビニに弁当でも買いに行こうと部屋を出た私は、隣の異変に気がついた。開け放たれたドア、玄関前に積み上げられた段ボール。
またか。
もうすっかり見慣れた光景に、私は鍵をかけながら、隣室の住人に気づかれぬようこっそりとため息を吐き出した。
今の住人が引っ越してきてからちょうど3ヶ月。そろそろではないかと思っていたのだが、やはりそうだった。入居期間わずか3ヶ月………これはもう間違いなく何かある。
私が住むのは、地方都市の、駅近くにある8階建て賃貸マンション。築年数は10年もたっておらず、外装内装ともにまだまだ綺麗だ。ここの最上階に私は住んでいた。
1DKで独り暮らし向けの部屋。広いとは言い難いが、1年半住んでいる私はすっかり気に入っていた。
異変が起こったのは1年前の3月だった。2ヶ月ほど空き部屋だった隣室に、1人の男性が引っ越してきた。40過ぎのサラリーマン風の男性。別段気にかかるような点もない、ごく普通の男だった。
まぁ隣人といっても廊下ですれ違った時に会釈する程度で、あとは特に関わることもなかった。
そして変わらぬ日々を過ごしていたある日、彼は突然引っ越して行った。それは入居から3ヶ月目のことだった。
たった3ヶ月での引っ越し。しかし、まぁ独り暮らし用の賃貸の物件だ。こういうことも珍しくない。男の引っ越しを私は特に気にとめていなかったのだが、次の日には20代のOL風の女性が隣室に引っ越してきた。
そのあまりの早さにはさすがに私も疑問を抱いた。空き部屋になったら業者が入って室内の清掃を行ってから次に貸すのが普通だと思っていたのだが、最近は違うのか。それとも清掃も待てないほどの超人気物件なのか。
そんなことを思っていると、また3ヶ月後、OL風の女は引っ越していった。そして、またしても翌日には大学生風の若い男が入居した。
そしてかれこれ1年がたち、今日、50代後半と思われる恰幅のいい4人目の隣人が引越して行く。
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