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「…ねえ!現実逃避は終わった?まだ覚醒(お)きてないわけ?」
…いつの間にか目の前に人が立っていた。それに気づかない程の時間僕は現実逃避していたのだろうか。
「……君は誰?っていうかここどこなんだ?」
「…私の事覚えてないの?まさか不完全?」
「?いったい何をいって…?」
「…まあ後々思い出すでしょう。それより、私の事だったわよね。私の名は天照。あなたのいた時空では天照大御神(あまてらすおおみかみ)とも呼ばれていたわ。」
「…え?あ…天照だって?いやいや天照大御神といえば古事記とか日本書記とかに出てくるあの?そんなまさか。」
「…こんな若い娘がって?あなた顔に出過ぎよ。私に驚いていたらあなた自分の事思い出したらどんな反応してくれるのかしらね。」
「僕?僕はただの冴えないフリーターだけど。」
「あなたともあろう人が流転を繰り返す内に忘れてしまったのね。」
「???」
「今のあなたには解らないでしょうけどあなたは須佐之男。私の弟の建速須佐之男命(たけはやすさのおのみこと)よ。」
「…僕が須佐之男だって?平凡で特に取り柄もこれといってない僕が?」
「……自分でいってて悲しくならないのそれ。」
僕の姉と名乗る天照という人は呆れたという顔をしていた。僕は全く理解が追い付いてないというのに。
「まあ正確にはあなたの魂が須佐之男であるのであってあなたの肉体はあなたそのものよ。」
「…つまり?」
「もう!理解が遅いわね!あなたの魂は須佐之男の魂を受け継いでいるのよ!あなたが何代目の須佐之男かは私も忘れてしまったけれど。」
僕は完全にポカンとしていた。
「…僕が須佐之男だというのなら僕と君にはもう一人兄弟がいるんじゃないか?……確か月読だったっけ。」
「………そう。あなたの兄にあたるわね。彼は…荒御魂となってしまったわ。」
僕は地雷を踏んでしまったのだろうか。兄について尋ねた瞬間彼女の表情に影が差した。
「…荒御魂って何?」
「…荒御魂というのはね、業を背負いきれなくなった神が堕ちる姿よ。」
そう言いながら俯いてしまった彼女にこれ以上聞くのは忍びなかった。
「……さあ行くわよ。」
彼女はついてこいというようにさっさと歩いて行ってしまったため仕方なくついていく事にした。
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