曰(イワ)くつきの人事 -2

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「どうした?」 布川さんが振り返る。 「やっぱり、会社を出るまでは別々に行きましょう」 「何で?」 「また……誤解されるから」 布川さんは私の言葉に一瞬硬い表情を見せ、怒ったように鼻から息を漏らした。 そして、私を見つめてはっきりと言った。 「行くぞ」 その言葉にも一歩が出ない私に布川さんは私の腕を引いた。 エレベーターホールまで私を連れて行くと、手を離し、ボタンを押した。 エレベーターが到着するまでの間、 布川さんは階数表示を見上げ、 私は足元に視線を落として俯(ウツム)いた。 「誤解する奴らには勝手にさせておけばいい。だいたい……」 私はそこで顔を上げた。 「『社長の愛人』っていうより、『室長の恋人』って方が現実味があるってもんだろ?」
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