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そのうちにどこからか囁き声が漏れてきた。
「秘書の安藤さんと室長?あの二人……一緒に帰るつもりかな」
「まさか。この会社で安藤さんに手出せる人いないでしょ?安藤さん、特別だから室長が送ってくんじゃないの?」
その声は、恐らくエレベーターに乗っている全員の耳に入った。
もしかしたら、ここにいる全員がそう思っているのかもしれない。
俯いたまま黒目だけを持ち上げて布川さんの顔を覗き見ると、
彼は少しも表情を変えず、私の視線に気付いたのか小さく微笑んだ。
その表情に少しだけ戸惑った。
どうしてこんなにも余裕なんだろう……。
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