曰(イワ)くつきの人事 -2

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人気(ヒトケ)のなくなったロッカールームでひっそりと着替えを済ます。 私服は噂のこともあって、地味に抑えている。 白いパンツにグレーのカットソー。 たった一つのこだわりは、ピアスとネックレスを合わせること。 曇ったパールのネックレスを首に掛け、お揃いのピアスを耳たぶの小さな穴に差し込んだ。 そして、最後に眼鏡を掛ける。 これで一段と地味になる。 荷物をまとめて、もう一度秘書室に引き返した。 布川さんは既に施錠を済ませて廊下で待っていてくれた。 「お待たせしてすみません」 「いや、今出てきたところ。行こうか」 そう言ってエレベーターに向かう布川さんを私は慌てて呼び止めた。 「室長!」
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