社長の右腕

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布川さんと別れて一人で電車を待っていると、 先程よりも一、二度、気温が下がったように感じた。 私はスプリングコートの襟(エリ)を立て、 ポケットの中に手を入れた。 マンションに帰ると、 二人掛けの小さなダイニングテーブルの上に鍵を放り、 そのままベッドに直行した。 身体を投げ出すようにうつ伏せでベッドに倒れ込んだ。 たいして高価なベッドでもないのに、私を心地よく受け止めて 『おかえり』って言ってくれる。 「ただいま……」 私は枕に顔を埋め、 指先でシーツを握りしめた。
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