社長の右腕

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始業の準備を始め、朝礼が始まった。 秘書室で連絡事項を確認すると、それぞれの持ち場に移動する。 そこが私たち秘書のもう一つのデスクだ。 私の持ち場は社長室のすぐ手前、社長室とドアを一枚挟んだ小さな空間だ。 来室者は最初のドアを開けて真っ先に私に出会うことになり、私が用件を確認した上で社長に取り次ぐことになっている。 つまり、役員室は二つの扉をくぐることになるのだ。 その日の午後のことだった。 社長室のドアがノックされた。 「はい」 私の返事が届くより先にドアが開く。 ドアの向こうから現れたのは つい先日話題となった徳島部長だった。 「お……疲れさまです」 思わず言葉に詰まってしまった。 彼は相変わらず私に冷めた視線だけを向けていた。
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