社長の右腕

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「どうした?」 いつも通りの彼は私の行動を不審に思ったかもしれない。 ドアのノブに手を掛けかけて、腕を下ろした。 「今……徳島部長がお見えになっています」 「……徳島部長が?」 「はい」 私は声のトーンを落として頷いた。 なんだか悪い予感がした。 「どうしたんだ?そんな顔して?」 ……私はどんな顔をしてるんだろう。 「徳島部長に……何か言われたのか?」 「いえ、そういうわけじゃありませんけど……」 すると、彼は私の顔を覗き込むようにして笑顔を見せた。 「よかった。そんな顔してるから、口説(クド)かれたのかと思ったよ」 「え?」 そうじゃなくて…… 私が言葉にするより早く、布川さんは「行ってくるよ」と言ってドアの向こうへ行ってしまった。
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