社長の右腕

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私は閉じてしまった目の前のドアを見つめ、 小さくついたため息から深呼吸に変え、 布川さんのコーヒーを淹れるために慌てて身体を翻(ヒルガエ)した。 布川さんはブラックだ。 ソーサーには何も添えないコーヒーを持ち、再び社長室のドアをノックする。 ドアを開けると三人の顔が同時に私の方を向いた。 「失礼します」 私は三人の視線を掻(カ)い潜(クグ)るようにテーブルに近付いた。 布川さんは社長の隣に座り、二人が徳島部長と向き合っていた。 室内は和やかな……とは言えず、 むしろ、それとは逆の空気が漂っていた。 それを裏付けるかのように、布川さんの表情は硬く、 「ありがとう」と、言った彼の声も沈んでいた。
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