社長の右腕

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徳島部長が退室して数分後、 布川さんが疲れた様子で社長室のドアを閉めた。 「……室長」 私は思わず彼に駆け寄った。 「室長……何が……」 私はそこまで言いかけて口を噤(ツグ)んだ。 私の立場で出過ぎたことだと思ったのと、布川さんの表情に予想以上に疲れが見て取れたからだ。 彼は私の前で小さなため息をついた。 それはいつもの彼なら絶対にしない、彼らしからぬ仕草だった。 「室長……」 何と言葉を掛ければいいのかわからなかった。 布川さんは言葉を絞り出すように言った。 「彼から取引を持ちかけられた」 「取引?」 思わず声がひっくり返った。
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