社長の右腕

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「取引って何を……」 これは単なる独り言のつもりだった。 けれど、布川さんはもう一つため息を混ぜてそれに答えた。 「君だよ、君。社長が言ってただろ?あの男が君を欲しがっているって」 私はその言葉にすぐに反応が出来なかった。 布川さんが徳島部長を『あの男』と呼んだことに違和感を覚え、そちらの方に気が行ってしまった。 「君は……たいして不安でも何でもなさそうだね?」 反応が薄かった私に不満だったのか、布川さんの機嫌をさらに損ねてしまったようだ。 「そ、そうじゃありませんよ。不安も何も……どんな話か全くわからないので反応のしようもないじゃないですか」 私は自分の態度を正当化するように言い訳をした。 実際、断片的に聞いてるだけで、 何がなんだかわからない。 わかっているのは…… 私が話題の中心にいると言うことくらいだった。
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