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「はあーあ、気が重い」
布川さんは相変わらず、彼らしくない。
「そんな深いため息、部下の前で見せていいんですか?」
私が彼を元気付けようとすると、彼は小さく微笑んだ。
「いいだろ?君にくらい。泣きつきたくもなるよ」
いつもは頼もしい彼がこんなにも弱っていると、
母性本能というのだろうか、
思わず抱きしめたくなってしまう。
そんな目を……してしまったのだろうか。
「ここが会社じゃなかったら、抱きしめてくれた?」
そんな時、
いいタイミングで布川さんの胸元から小さな振動音が聞こえてくる。
「ほら、室長は忙しいんですから」
私は震える彼の胸元に少しだけ触れた。
「上手くはぐらかしたな?今度は逃がさないから」
彼は胸元からスマホを取り出した。
「また改めて話す」
彼はスマホを耳に当てながら部屋を出て行った。
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