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「彼が社長室に来るということは、電話で済むような話じゃない。いつだって、最重要な案件だ。彼が手ぶらでやって来るのは、それに基づくデータが、全部頭の中に入っているからなんだ」
「そんなこと……」
「あり得ないようであるんだよ。彼の記憶力には本当に驚かされるよ」
「でも……」
私は再びそこで首を傾(カシ)げる。
「社長に見せる資料は……必要ですよね?」
「いや、それもいらない」
「え?」
「社長はね、目で見る数字の並んだ資料より、彼の言葉を信用してるんだ。徳島部長がNOと言えば社長は実行しない、代わりに彼のOKがもらえれば社長は安心して実行に移すだろう」
そこに見える……
社長の彼に対する絶対的な信頼……
確かに彼は、
社長の右腕と……
言えるのかもしれない。
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