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だけど……
彼にはいつも手ぶらなのとは別に、
もう一つ、特徴があった。
社長室にみえるたびにたった一言だけ挨拶を交わす。
「お疲れさまです」
私が頭を下げると、彼は返事をしないまま視線だけを私に向ける。
その目が……
何とも言えない感覚を私の中に残すのだ。
私の噂は社内中に広がっている。
最初は彼も私を社長の愛人として蔑(サゲス)むように見ているのかと思った。
だけど……
そうではないような気がした。
けれど、そうではないにしろ、
彼の視線の意味がわからないので
彼が……
どうしようもなく
苦手なのだ。
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