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私は複雑な思いで彼に向って頭を下げた。
一方で、頭を上げて布川さんの顔をすぐには見られなかった。
「決まったな」
徳島部長の自信に満ちた低い声が私と布川さんの二人の間を通った。
布川さんは一呼吸置いて口を開いた。
「…いいでしょう。けれど……安藤君が経理部にいられるのは、ほんの一時(イットキ)のことになるかもしれませんが、よろしいですね?」
その声はどこか徳島部長と同じ響きを持っていた。
……一時(イットキ)のこと……?
これには徳島部長もすぐに反応できなかったようだ。
もちろん……
私もだ。
どうやら、
布川さんにも
彼とは別の思惑がありそうだった。
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