933人が本棚に入れています
本棚に追加
「よかったね」
その声に私はゆっくりと彼女に顔を向けた。
部屋には二人きりなので、彼女が私に話しかけたのは間違いない。
けれど、私は本当に自分に向けられた言葉なのか疑ってしまった。
「……よかったって……異動ですか?」
私はぎこちなく返事を返した。
「他に何があるの?よかったじゃない、こんなとこ抜け出せて」
私が返答に困って苦笑いを浮かべると、彼女は明るい笑顔を私に向けた。
「私はラッキーだったわ」
「ラッキーって……」
「こんなとこにいたらどうかなりそうだったから。辞めることも考えてたんだけど、異動になってラッキーよ」
彼女の普段は見せない表情は心からそれを喜んでいるようだった。
最初のコメントを投稿しよう!