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私の様子を見て彼女が落ち着いて付け足した。
「あ、誤解しないで。私は何とも思ってないから。今後のあなたとの距離を測るために聞いてみただけ」
「……そんなこと、するわけないじゃないですか」
すると、彼女は乗り出していた身体を椅子の背もたれに思い切り投げ出した。
「そうだよね。社長は素敵だけどやっぱりセックスするなら若い方がいいもん」
「そういう意味じゃ……」
「じゃあさ、室長とはどうなの?」
「南田さん……」
私はため息をついた。
「ないの?」
「……あるわけないでしょ」
ワントーン声が低くなってしまった。
私はあの日のことを
引き摺(ズ)っていた。
たった一晩でもいいから
布川さんと一緒に過ごしてみたかった。
涙とお酒の力を借りて
淋しい女になって彼にすがればよかったと
あの夜のことを何度も思い出していた。
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