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そんなわけはないけれど、
心臓が止まるかと思った。
「……どうしてですか?」
喉の奥から絞り出さなければ声が出なかった。
「どうしてって……。て、その前に、歳、同じなんでしょ?敬語やめてよ」
「あ、うん、わかりまし……わかった。わかったから」
彼女に対してすぐに敬語を取り払うことには違和感があったけれど、今はそれどころじゃなかった。
私は無意識に目で先を促(ウナガ)していた。
すると、彼女は私の視線を感じて口の両端を吊り上げた。
「社内一食えない男で社長の右腕」
心臓がさっきよりも大きく跳ねる。
彼女の脳裏には彼の姿が浮かんでいるのか、上がった口角がゆっくりと下りて小さな微笑みに変わった。
「興味あるわ、彼」
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