彼の思惑

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「私が……経理部!?」 声が少し大きくなってしまった。 「なんで私が経理なんですか!?」 私は少し声量を落としながらも布川さんに詰め寄るように言った。 「……そこなんだよ。 彼の言い分ではただでさえ手が足りていない経理部で、4月末で急に一人退職することになったらしいんだ。 その補充にってことらしいんだけど、何も君じゃなくてもいいだろう? 君は他の役員秘書とは違う、現役の社長秘書なのに」 布川さんは腕を組んでため息をついた。 徳島部長が緊急に人手を必要としている理由はわかったけれど、 そこに私を指名してくる理由は依然として不明だった。 今まで事務経験はあるけれど、経理の経験はない。 履歴書を見たってわかるはずだ。
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