929人が本棚に入れています
本棚に追加
ただ一つ、私にもわかるのは、
秘書課から誰か二名が異動するならば、
やはり、その内の一人は
私であるべきだった。
「室長、必要であれば私は指示通りにしますから」
「……経理部に行くのか?あの男のところに?」
「あの男のって……」
いつもは冷静なはずの彼の言葉ではないような気がした。
「室長、落ち着いてください。それが会社の方針ならそうします。その代わり、『あの男のところ』ではなく『経理部』に」
布川さんは我に返ったのか、私に「すまない」と小さく謝った。
「だけど……。君は社長が自ら見つけた人材だぞ?それを欲しいだなんて、図々しいにもほどがある。
君も社長の顔を見ただろ?人事調整を行うことはもちろん社長も知っていた。だけど、徳島部長のこの提案は社長にとっても寝耳に水だったんだよ」
彼は話しながら再び鼻息を荒くした。
最初のコメントを投稿しよう!