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徳島部長はいったい何を考えているのだろうか。
けれど、社長の右腕と言われるほどの彼が、
何の理由もなしにメチャクチャなことを言い出すとは思えなかった。
「……室長。徳島部長の考えはわかりませんけど、異動の二名にはちゃんと私を選んでください」
彼はあきらめたような視線で私を見つめた。
「他の誰かがここを出て、私がここに残るようでは、誰も納得しないでしょう。彼女たちはきっと室長に反発します。
そうなれば、室長の立場も厳しくなります。室長にはここで社長を支えていただかないと……。
私がいなくなれば、彼女たちも働きやすくなるかもしれませんよ?」
私はおどけて笑って見せた。
「君はすごいな……」
彼は肩を落とした。
「……え?」
「悪い。上司の俺が、公私混同だな……」
そう言って布川さんが疲れた笑顔を見せた時だった。
ドアをノックする鈍い音に
私たちは一瞬顔を見合わせた後、
同時にドアに顔を向けた。
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