彼の思惑

8/27
前へ
/27ページ
次へ
そのノックには違和感があった。 まるでタイミングを見計らっていたかのようなノックは単なる音にも関わらず、随分と不愛想に聞こえた。 「いい返事をもらいに来た」 ドアを開けて入ってきたのは他でもない徳島部長だった。 彼は私と布川さんと三角形になる位置で椅子ではなくデスクに浅く腰を掛けた。 「彼女は思った以上にものわかりがいいようだ。返事はもう決まってるんじゃないか?布川室長」 彼は腕を組みながらその位置から布川さんを見下ろした。 「聞いてたのか?悪趣味だな」 二人のやり取りに私の顔は強張(コワバ)った。
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

929人が本棚に入れています
本棚に追加