二度目の異動

30/31
1133人が本棚に入れています
本棚に追加
/31ページ
私の反応を楽しんでいるかのように思えて への字に曲がった自分の唇を小さく噛んだ。 「いえ、そんなことありません」 彼は私の言葉を無視して私に向かって書類を突き出している。 「何部ですか?」 「一(イチ)」 私が書類を受け取ってコピー機へ向かおうとすると、彼が呼び止めた。 「勘違いしないように教えてやろう」 彼は私が正面を向くのを待って本題に入った。 「就業時間内で俺の一秒と君の一秒を一緒にしてもらっては困る。俺の十分(ジュップン)と君の一時間、どちらに価値があると思う?」 私はすぐには答えられなかった。 「どちらが会社に利益を生むと思う?」 理解が悪いと思われたのだろうか。 彼は別の言い方をした。
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!