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その言葉を聞いてほんの数秒前の決意が揺らぐ。
部長と……二人……。
頭の上に重い塊(カタマリ)が乗っかるのを何とか踏ん張って背筋を伸ばす。
「誰か出勤日を交代してほしい者はいないか?この際だから遠慮なく言え」
しばらく間が空いた後、同時に二人の女性が遠慮がちに手を上げた。
手を上げたのが二人もいたので、彼女たちはお互いに譲(ユズ)り合ってもう一度手を引込めた。
すると、部長が一人ずつ話を聞き出す。
一人は人気アイドルグループのコンサートに行きたいのだという。チケットの抽選に漏れたので諦めていたものの、運よく知人から譲ってもらったけれど、既に出勤日が決定していたので言い出せなかったそうだ。
もう一人は代わってもらえるなら予定している帰省をもう一日延長したいとのこと。父親の具合が思わしくなく、出来るだけ長く滞在したいと申し訳なさそうに言った。
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