忍び寄る過去-2

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部長の言葉に鼓動が乱れ、手のひらには冷たい汗が滲んでいた。 平静さを取り戻そうと必死だった私は、出来るだけ部長を自分の視界に入れないように努力した。 もちろん、そんな努力は何の意味もなかったのだけれど。 ドアを開けると、当然の如く見慣れた秘書の待合室だった。 驚いたのは秘書席に森垣さんが座っていたことだ。 森垣さんは私が在籍中、秘書室のリーダー的存在で、 いつも顎を上に向けてみんなを仕切っていた人だ。 要するに、私の最も苦手な人だった。 けれど、私は彼女がこの席にいることに違和感を覚えた。 私が秘書室から異動した後、 社長秘書にはてっきり布川さんがなるものだと思っていたのだ。 確か、布川さん本人もその方が引継ぎの手間がないという理由でその意向だったはずだ。 その後、部署内での調整があったということだろうか。 考えてみたものの答はわからなかった。
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